少なくとも半年はサイトで公開しないつもり
とかほざいていた、スパークでスケブ代わりにしようとしていた
小噺をうp……お渡しした数名には本当申し訳ない。。
どうやらサーチでもシンヒカ目当てでいらっしゃる方が一番多いようで、
やはり需要もあるようなのでまあいいかなと
この「シンジのキッチン」は人間篇とポケモン篇があります。
ポケモン篇が近々うp予定です。
少なくとも10月初~中旬は目指したい。
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「シンジ、今日が何の日か知ってるか?」
そこはかとなく薄っぺらい笑みを湛えた兄が話しかけてくるのを、
そこはかとなく嫌な予感がよぎるのを感じながらシンジは横目で見遣った。
「……知らないな」
無関心に言い放ったシンジに、
兄レイジは堂々と言い放った。
「今日は兄さんに孝行をする日だ!」
世の中の弟や妹たちが日頃の感謝を兄に伝える日なんだよ、
と御丁寧に説明までこなす兄をじとりと睨むと、
「そんな無茶苦茶な日、聞いたことがない」
シンジはそう言って自室へ向かおうとした。
だがその動線上に兄が立ち塞がり、「とうせんぼう」を決め込んでいる。
二人は暫し対峙する。
シンジは大きく溜息をついた。
「………………望みは何だ」
どんな孝行をしてほしいと言うのだ。
観念した様子のシンジに、レイジは満足げに言った。
「今日はシンジが夕飯を作ってくれ」
シンジだってひとりで旅をしている身だ。料理くらいできる。
渋々、兄のエプロンをつけ、腕まくりをして手を洗う。
彼自身はどう思うのかわからないが、その佇まいはどこか兄に似ていた。
「まだこんな時間だ。献立もシンジが決めるんだぞ。
買出しに行ってもいいが、食材は割とたくさんある。
あと、多めに作ってくれ」
エプロンを外しすっかりリラックスしたレイジは、
じゃあポケモンたちの様子をみてくるから、
と言って姿を消した。
それを背中で見送って、シンジはまた溜息をついた。
数時間後。
トバリシティの育て屋周辺に、食欲を誘う夕餉の匂いが漂い始めた。
ごくシンプルな献立だが、手抜き料理というわけではない。
シンジが、自分と兄、二人分の食器に料理を盛りつけた時だった。
「お邪魔しまーす」
聞き覚えのある声が、戸口から入ってきた。
少年サトシと少女ヒカリ、彼らより少し年上のタケシだ。
「何故………………お前たちがここに」
頭の片隅で兄の陰謀に気付きつつ、シンジはそう呟いた。
「レイジさんに夕食に呼ばれたんだ。美味しいもの作るからって」
「でもそのエプロン…………もしかして、シンジが夕飯作ったの?」
シンジは表情を凍りつかせて、本日何度目になるかわからない溜息をつき、
兄のほうを睨め上げる。
兄はと言えば涼しい顔で、
「大勢で食べたほうがより美味しいだろう?
彼らがトバリに来ているのは知ってたから、呼んだんだ」
ニコニコして皿一式を3人分用意するレイジは更に、
「大丈夫、お前が料理できるっていう意外性は、
彼らの評価を上げこそすれ落としはしないから」
こういうのなんていうんだっけ? ギャップ萌え? 違うかぁ、などとのたまう。
そんな兄に対して、シンジはもはや言い返す術を持たなかった。
「すっごーい! 美味しそう!」
兄が運んだ皿を見てヒカリが歓声を上げるのを聞きながら、
まあたまにはいいか、
と一瞬思い、そのことに少しだけ自己嫌悪して、
シンジはエプロンを外した。