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四月馬鹿 / シュウハル（＋ハリ）小話

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「シュウ、今日はエイプリルフールよ！」

いたずらっぽく両目を輝かせるハルカ。

「君、もしかして『だからこれから嘘をつきます』って宣言したいのかい？」

「そっ……そうだけど」

「騙す相手に最初から裏を明かしてどうするんだ。
そんなだからいつもハーリーさんに騙されるんだよ」

「うるさいかも！
『嘘をつきます宣言』はほんとだけど、騙す相手はシュウじゃないわ」

「へえ、じゃあ誰なんだい？」

「ふふん……、まさにそのハーリーさんよ！」

いつも騙されているんだから、今日ぐらい仕返しよ！
などとのたまうハルカにシュウは一言、

「やめたほうがいい。
今日は誰もにとってエイプリルフールなんだ。
つまり彼にとっても騙し日和ってことさ。
君がのこのこ近づいていったら恰好の餌食だよ」

「カモちゃーん！」

釘を刺した矢先、不吉な声が近づいてきた。

「ハッピーエイプリルフール、カモちゃん！　シュウくん！！
ハーリー、今日は仲睦まじい二人に素敵なプレゼントがあるの」

後ろ手に何かを隠し持ったハーリーに露骨な警戒を見せるシュウ。

「やーね、ヘンな物じゃないわよ。
今日はエイプリルフールでしょ？　楽しくて無害な騙し合いをしましょ」

結局騙すんじゃないか、とシュウは思ったが音にはしなかった。

「はいっ、こ・れ。」

ハーリーがハルカに手渡したのは、
綺麗に包装された、魚の形をしたチョコレートだ。

「チョコレート……？　バレンタインは２月ですよ？？」

「違うわよ。あのね、ハルカちゃん」

ハーリーは思わせ振りなジェスチャーでハルカに耳打ちのポーズをして、

「遠い西のほうの国では、エイプリルフールをPoisson d'avrilって言って、
『四月の魚』って意味なんだけどね、
この日に魚の形をしたチョコレートを贈ると恋愛が成就するんですって！
せっかくだから、これ、シュウ君にあげなさいよ！」

そしてにっこりと満面の笑みを浮かべた。
ハーリーのセリフはシュウにも丸聞こえだ。

「え、ちょ、そんな、別に私とシュウはそんなんじゃ…………」

「あーら、いいの？
このままだと、結ばれるのはハルカちゃんとアタシよ？」

「えええ！？　どうしてですか？？」

「だってアタシ今ハルカちゃんにチョコあげたじゃない。
シュウ君にあげて『上書き』しなきゃ、でしょ？」

「え、で、でも…………」

ハルカは八方塞がりでしどろもどろだ。

「ハルカ、」

「シ、シュウ！」

真っ赤になってシュウを振り向いたハルカに、
苦笑しながらシュウは助け舟を出した。

「僕、今甘いものが欲しいんだけど。何か持ってない？」

「！　こ、これ！　チョコレートよ！！
たっ……たまたま今、ハーリーさんがくれたの！！！」

「ふーん。まあいいや、ありがとう。頂くよ」

魚の尾の部分を割ってチョコレートを口に含むと、
予想外の美味しさにシュウは目を丸くした。

「美味しい。ハーリーさん、たまには無害なこともするんですね」

「今日はエイプリルフールだもの。
それにあんなに慌てるハルカちゃんが見れて楽しかったから
全然オッケーよ。
それじゃ、明日会場で会いましょ」

ひらひらと手を振って去っていく後姿に、
ハルカは熱くなった頬を覚ましながら大きな溜息をついた。

「やっぱりからかわれたかもー。
でも、シュウにチョコ渡せてよかった」

「どうしてだい？」

「え、そ、それは………………」

「君、ハーリーさんに何か言われたね？
所詮嘘なんだから本気にしたら負けだよ」

「……………………あー！！」

ちょっとシュウ！　私にもそのチョコ一口頂戴！！
これは君がくれたんじゃないか。もう僕のだからあげないよ。
ポケモンセンターのロビーは今日も長閑なのでした。


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以下蛇足

「四月の魚」という日本の映画がありまして、
『魚の形のチョコを贈ると恋愛成就、という嘘』というのは
それのパロディです。
Poisson d'avrilという語（フランス語）とその意味はほんとうです。笑

要するに、
嘘だってわかっていたら、
ハーリーさんと結ばれてしまう、などと慌てなくて済んだわけですね。
魚の形のチョコを贈ると、ていうのがそもそも嘘なんですから。

慌てるハルカを眺めるシュウ君も楽しんでるに違いないと思います。
そしてハーリーさんにはPoisson d'avrilってセミネイティヴな発音で言って欲しい笑